小学校・中学校の朝の読書におけるマンガの扱い
今野栞那、佐藤里胡、西村花奈、原愛咲美、藤田彩夢、星野唯花、細野美晴、宮本花音、湯浅留加、池田姫華、片山ふみ
1.はじめに
1.1 研究背景
本研究の着想のきっかけとなったのは、筆者ら自身の小中学校時代の経験である。筆者らが小中学生の頃、朝の読書活動(以下、朝の読書)においてマンガを読むことは認められておらず、学校図書館においても、所蔵されているマンガは学習マンガに限られていた。
一方、先行研究を概観すると、近年では学校図書館におけるマンガの所蔵や、教育現場における教材としての活用など、マンガを教育や読書活動に取り入れる動きがみられる。また、子どもの読書離れが課題とされるなか、マンガを読書に苦手意識をもつ子どもにとって有効な読書材として評価する見方もある。さらに、「これも学習マンガだ!」のように、従来の学習マンガの枠組みを広げ、多様なマンガ作品の学習的価値を見出そうとする取り組みもみられる。
こうした動向を踏まえると、学校図書館や教育現場においてマンガの価値が見直されつつある一方で、朝の読書においては依然としてマンガが忌避されているのだろうか。それとも、時代の変化とともに朝の読書においてもマンガが許容されるようになっているのだろうか。この疑問が、本研究に取り組む出発点となった。
1.2 研究目的
そこで本研究では、現在の小中学校の朝読書においてマンガがどのように扱われているのか、その実態を明らかにすることとした。
1.3 朝の読書とは
朝の読書(「朝の読書運動」、「朝読書」、「あさどく」、「(朝の)一斉読書」などの呼称もある)とは、毎朝学校で授業が始まる前の10分間程度、全校児童生徒が一斉に自分の好きな本を読むという活動である。朝の読書の四原則として「①みんなでやる ②毎日やる ③好きな本でよい ④ただ読むだけ」 )が掲げられている。
1988年、船橋学園女子高校(現・東葉高校)に勤務していた林公が提唱し[1])、1997年に朝の読書推進協議会が発足して以降、全国の小・中・高等学校へ急速に普及した朝の読書推進協議会の調べによると、2026年5月段階での実施率の全国平均は,小学校82%,中学校81%,高校42%であり,特に小・中学校の多くが取り入れている活動であることがわかる。
1.4 研究方法
本研究では、1.2で示した目的を明らかにするために、小中学校に対してアンケート調査を実施する。アンケートは、Microsoft Formsを用いたWebアンケート調査とした。
倫理的配慮として、調査依頼文書に、調査の目的、回答の任意性、回答を拒否する自由、収集した情報の取り扱い等について明記した。また、アンケートの冒頭にも同様の説明を記載し、回答者が内容を確認したうえで調査に参加できるようにした。なお、回答の送信をもって調査への同意が得られたものとみなすことについても、あらかじめ明示した。
1.4.1 研究方法の軌道修正
当初は、アンケート調査によって朝の読書の実施状況や教員の意識を把握したうえで、その状況に至った経緯や背景にある意図を明らかにするため、インタビュー調査を実施することを計画していた。そのため、アンケートの最後にインタビュー調査への協力の可否を尋ねる項目を設けた。また、インタビュー調査の実施可能性を考慮し、調査対象地域を千葉県A市に限定するとともに、QRコードを付した依頼文書を手渡しで配布する方法を採用した。
しかし、アンケートの回答数が30件に達した時点でも、インタビュー調査への協力を得られる見込みが立たなかった。そこで、インタビュー調査の実施を断念し、アンケート調査を中心とする研究方法へ変更することとした。これに伴い、調査対象地域を全国に拡大するとともに、機縁法を用い、回答者から新たな調査協力者の紹介を得るスノーボールサンプリングによって回答を収集する方針へと変更した。
1.4.2 調査項目
まず、回答者の基本属性として、年代、性別、勤務校の校種、中学校に勤務する場合の担当教科、職種(学級担任、教科担当、学校司書、司書教諭、管理職、その他から選択)、朝の読書への関与経験について尋ねる項目を設けた。
次に、朝の読書に関する基本的な事項として、朝の読書の目的、選書ルールの有無とその決定主体、読むことが制限されている資料・メディアの種類、朝の読書に望ましいと考えるジャンルや資料形態について尋ねる項目を設けた。
さらに、本研究の中心的な調査項目として、朝の読書におけるマンガの許容状況とその理由、条件付きで許容する場合の具体的な条件、マンガに対する意識について尋ねる項目を設けた。
なお、朝の読書の目的、選書ルール、望ましいと考えるジャンルや資料形態については、朝の読書におけるマンガの許容・不許容の判断に影響を与える可能性のある要因として位置付けた。
2. 調査結果
2.1 調査概要
アンケート調査は、全国の小中学校の教職員を調査対象とし、2026年6月下旬~8月下旬にかけて実施した。回答数は74件で、すべて有効回答とした。
2.2 回答者の属性
回答者の勤務校の校種は、小学校が6割を超える47名、中学校が約3割の22名であった。職種については、学級担任が40.5%(30名)、学校司書が39.2%(29名)と、この2職種で全体の約8割を占めた。そのほか、教科担当が8.1%(6名)、管理職が6.8%(5名)、その他が5.4%(4名)であった。なお、「その他」には、兼務者などが含まれる。
朝の読書の運営やルール作成に関与した経験については、「なし」が54.1%(40名)、「あり」が45.9%(34名)であった。
性別は、女性が64.8%(48名)、男性が33.8%(25名)、その他が1.4%(1名)だった。年代については、表1に示した通り、幅広い年代から回答が得られた。
回答者の地域分布は、表2に示す通りであり、千葉県と神奈川県に偏りがみられた。この背景には、1.4.1で述べた調査方法が関係していると考えられる。千葉県については当初、同県A市を対象としてアンケートの配布を行っていたこと、神奈川県については、調査対象を全国に拡大した際、同県の学校司書を通じて調査協力を依頼したことが、それぞれ回答の集中につながったと考えられる。
表1:回答者の年代
|
20代 |
30代 |
40代 |
50代 |
60代 |
70代 |
|
12 |
18 |
14 |
17 |
12 |
1 |
表2:回答者の地域
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都道府県 |
件数 |
|
茨城県 |
3 |
|
栃木県 |
2 |
|
群馬県 |
1 |
|
埼玉県 |
5 |
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千葉県 |
32 |
|
東京都 |
2 |
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神奈川県 |
22 |
|
富山県 |
2 |
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石川県 |
1 |
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愛知県 |
1 |
|
佐賀県 |
2 |
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沖縄県 |
1 |