愛知大学 家禰ゼミ with 怪異情報学創発プロジェクト
都市伝説の情報変容を読み解く
―発祥・変容・時代背景と記録化・公開倫理―
共通方法論・分析枠組み / 学生12名による有名都市伝説の比較レポート&論文(怪異情報学創発プロジェクト)
取り組みの概要
本年度の家禰ゼミでは、「都市伝説の情報変容を読み解く」をテーマに、学生12名がそれぞれ一つの都市伝説を取り上げ、その発祥、変容、時代背景、情報学的特徴を共通の枠組みで調査・比較します。都市伝説を単なる「怖い話」としてではなく、口コミ、出版物、テレビ、インターネット、SNS、動画など、時代ごとのメディアを通して記録・編集・拡散・再利用される「情報」として捉える試みです。
あわせて、家禰ゼミから派生した「怪異情報学創発プロジェクト」では、東三河地方に残る地域伝承が、デジタル環境のなかでどのように再話され、新たな名称や意味を与えられ、検索可能な情報へと変化しているのかを研究しています。
本展示では、学生による12の都市伝説の比較調査と、怪異情報学創発プロジェクトによる地域伝承研究を通して、怪異・伝承・都市伝説を「情報の生成・変容・記録・流通」という図書館情報学の視点から考えます。
1. ねらい:都市伝説を情報として読む
- 学生12名が、有名な都市伝説について「発祥・変容・時代背景」を1件ずつ調査する。
- 本ポスターでは、個々の都市伝説を単なる怖い話ではなく、媒体を通じて変形・再流通する情報現象として扱う。
- 真偽の判定ではなく、どのように語られ、記録され、検索され、再利用されるかを検討する。
- 怪異情報学創発プロジェクトでは、東三河地方の伝承から都市伝説変容を調査し、論文化する。
2. 共通分析項目
| 項目 | 問い |
| 発祥 | どの地域・媒体・時期に現れたとされるか。 |
| 初期形 | 初期の登場人物・場所・結末は何か。 |
| 変容 | 時代や媒体により何が変わったか。 |
| 時代背景 | 社会不安、技術、学校文化、流行とどう関わるか。 |
| 媒体 | 口コミ、雑誌、新聞、テレビ、掲示板、SNS、動画のどれか。 |
| 情報学的観点 | 記録化、検索可能性、拡散、再利用、公開倫理をどう見るか。 |
3. 情報変容モデル
| 段階 | 内容 |
| ①発生 | 体験談・噂・創作・伝承が初期形をつくる。 |
| ②媒介 | 口コミ、印刷物、放送、ネット、SNSで伝わる。 |
| ③編集 | 怖さ、教訓、場所、人物像が語りやすく加工される。 |
| ④変容 | 地域化、学校化、デジタル化、キャラクター化が起こる。 |
| ⑤記録化 | 書籍、新聞、Web、レファレンス、授業資料に残る。 |
| ⑥再利用 | 研究、展示、教育、地域文化、情報リテラシー教材に使われる。 |
4. 比較の視点
- 同じ都市伝説でも、地域・世代・媒体によって細部が変化する。
- 「どこで起こったか」より、「なぜその時代に語られたか」を重視する。
- インターネット以後は、検索・引用・コピペ・動画化により変容が加速する。
- デジタル時代の都市伝説は、怖さだけでなく、情報リテラシー教育の素材にもなる。
5. 記録化と公開倫理
| 確認事項 | |
| 出典 | 初出・引用元・参照日・媒体種別を明示する。 |
| 表現 | 「実在する」ではなく「語られている」と書く。 |
| 安全 | 危険地・廃墟・私有地への誘導を避ける。 |
| 尊厳 | 事件・災害・死者を娯楽化しない。 |
| 風評 | 地域・学校・施設・個人を不当に傷つけない。 |
| 教育性 | 恐怖消費ではなく、情報の変化を考察する。 |
6.学生レポートとの接続
- 学生カードは12件を同一フォーマットで比較する。
- 各カードは「発祥/変容/時代背景/情報学的観点」の4点に統一する。
結論:
都市伝説や地域伝承の現代的再話は、単に物語内容が変化する現象ではなく、媒体を移動する過程で編集・再記述され、検索可能な語彙や分類、表示形式を与えられながら記録・再利用されていく情報現象として捉えることができる。学生による都市伝説の比較では、発祥・変容・時代背景・媒体を共通の枠組みで整理することにより、時代やメディア環境と情報の伝わり方との関係を横断的に検討できることが示された。
また、東三河の地域伝承4事例の分析では、現代的再話において、歴史的文脈の圧縮、条件―結果型の行動規則化、検索を意識した語彙へのラベリング、ウェブ媒体に応じた表示・分類などが確認された。これらから、図書館情報学にとって重要なのは怪異情報の真偽を一括して判定することではなく、原伝承と現代的再話を区別し、媒体・作成主体・時点・出典関係を記録するとともに、異なる時期・媒体の記述を相互にたどることのできるプロヴェナンスを保持することである。
なお、本研究でいう「変容」は、異時点・異媒体の資料間に確認される記述差を示すものであり、明示的な引用・参照関係が確認できない場合に、因果的・系譜的な派生関係を意味するものではない。
論文
東三河の地域伝承は現代都市伝説としていかに再話されるのか
―デジタル環境における再話・ラベリング・検索可能化の図書館情報学的分析―
怪異情報学創発プロジェクト
(小田七実,家禰淳一)
抄録
本稿は,東三河地方に残る地域伝承が,現代のウェブ環境でどのような語彙・表示形式を伴って再話されているかを,異時点・異媒体の記述差として図書館情報学の立場から分析する。対象は,新城市の信玄塚,設楽町の田峯城内乱の首塚,豊川市の豊川稲荷・霊狐塚,田原市の田戸神社の四事例である。各事例について,地域史・文化財・図書館レファレンス等に記録された旧来の伝承層,自治体・観光機関による制度的再記述層,心霊・パワースポット系ウェブサイト等の現代的再話層を比較した。その結果,四事例の現代的再話では,①固有の歴史文脈の圧縮,②条件―結果型の行動規則化,③幽霊・金運・祟り等の検索語へのラベリング,④媒体によっては評価・コメント・動画等を伴う表示・分類が確認された。ここでいう「変容」は,異時点・異媒体の資料間に確認される記述差を示す分析語であり,明示的な引用・参照関係がない場合に一方から他方への因果的・系譜的派生を意味しない。図書館が地域怪異情報を扱う際には,真偽判定のみで整理するのではなく,原伝承・現代的再話・媒体・作成主体・時点・出典関係を分離して記述し,異なる版を相互にたどれるプロヴェナンス情報を保持する記述案を提示する。
キーワード:現代都市伝説,地域伝承,ネットロア,プロヴェナンス,地域資料
家禰ゼミ学生レポート(作業中)
本のしおり(怪異情報学創発プロジェクト)
色上質紙に印刷して、点線を切ってお使いください。
本のしおり(わくわくおたのしみブック)
これまでの家禰ゼミの取り組み(ポスターセッション・アーカイブ)
「わくわくおたのしみブック」の企画
「わくわくおたのしみブック」は、2021年度から2025年度まで実施した読書推進企画です。2026年度は、会場である「こども未来館ここにこ」の改装休館により実施していません。
家禰ゼミの活動としてスタートし、その後、山本ゼミ、愛知大学豊橋図書館学生サポーター「ALICe」が加わり、「おたのしみブックプロジェクト」として展開してきました。
本はタイトルや表紙が見えないようにラッピングし、包みには内容を想像させる短い紹介文だけを添えます。どの本が入っているかは、開けてみるまでわかりません。
普段なら自分では選ばない本との偶然の出会いを生み出し、そこから新しい興味や読書の世界が広がることが、この企画の大きな特徴です。
5年間の実践記録とアンケート結果に加え、他の図書館や書店の取り組みも視野に入れ、その成果を論文として公表しました。
【論文情報】
小田 七実,花里 千賀子,家禰 淳一「制度化された偶然性としてのブラインド・ブックス:図書館実践と情報行動論的意義に関する研究」Journal of I-LISS Japan, 8(2), pp.26–42, 2026年5月10日
★2025年度 ポスターセッション https://www.libraryfair.jp/poster/2025/273
★2024年度 ポスターセッション https://www.libraryfair.jp/poster/2024/204
★2023年度 ポスターセッション https://www.libraryfair.jp/poster/2023/135
★2022年度 ポスターセッション https://www.libraryfair.jp/poster/2022/68
★2021年度 ポスターセッション https://www.libraryfair.jp/poster/2021/1-0