今回は,査読にかかるさまざまな課題をとりあげます。
生命科学系のオープンアクセス誌『eLife』は2023年より,査読後の論文を全て「Reviewed Preprint」として公開し,同時にeLifeの編集評価と公開レビューを示すモデルを採用しています。eLife誌のReviewing Editorを務めておられる水島氏にお話をいただきます。
日時:2025年10月10日(金) 13:30〜15:00
場所:オンライン(zoom)
参加登録
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10月9日(木)正午までに参加登録を終えられた方に,zoom参加のためのURLをお送りします。
講演者
水島昇氏(東京大学大学院医学系研究科・教授,eLife誌 Reviewing Editor)
要旨
現在の査読システムは、著者、査読者、エディター、研究コミュニティーにとって多くの課題を抱えている。信頼性の高い論文の出版は不可欠だが、査読者からの過度な要求が、膨大な時間、労力、費用を不必要に費やしている現状がある。また、査読者の負担も深刻で、「査読疲れ」という問題も顕在化している。しかし、査読の効率化、透明化、プレプリントサーバーの活用、新しい査読モデルの導入といった変革によって、査読を取り巻く状況は少しずつだが変化しつつある。特に、生命科学系ジャーナル「eLife」が最近導入した、査読済み論文の全公開という革新的なモデルは大きな議論を呼んでいる。この新モデルでは、著者が論文の改訂内容や出版時期を柔軟にコントロールできるようになる。従来の「受理」または「却下」という二者択一的な判断を廃止し、査読者による段階的ニュアンスを含んだ評価コメントを公開しているのが特徴である。本講演では、これらの新しい取り組みを紹介しながら、今後の論文評価、公開、そして出版のあり方について議論したい。