世界中の図書館や図書館員の手により成長し続ける
#1Lib1Ref
日本のみなさん、こんにちは。ウィキメディア財団の文化遺産チーム、シニア・プログラム・オフィサー図書館担当のシルビア・エウニス・グティエレス・デ・ラ・トーレです。
私は公立図書館がめったに開館することのない小さな町の出身だったため、ウィキペディア(Wikipedia)は私にとって、より大きな世界への窓となりました。公立大学に進み、素晴らしい図書館を利用できるようになったとき、私の目標が明確になりました。
「先代の人たちがくれたように、自分が得た知識を他の人たちと広く分かち合うこと」
図書館員になってからは、「もっとできることがあるのではないか」と感じ、言語、社会運動、ジェンダーに関するウィキペディアの情報ギャップを埋めるために、一人のボランティアとして、7年間「ウィキメディア運動*」のキャンペーンの先頭に立ち、1,500以上の公共図書館があるメキシコシティで、図書館員のためのワークショップ立ち上げやメキシコで最初の1Lib1Refキャンペーン参加に携わりました。
その後、2023年2月よりウィキメディア・プロジェクトを運営する非営利団体ウィキメディア財団に加わり、文化遺産チームの一員として、図書館協会や図書館を中心とした「ウィキブラリアン**」コミュニティの声に耳を傾けながら、共に育んでいます。それはどういう意味か、#1Lib1Refというキャンペーンの例を通じて、もう少し具体的に説明してみたいと思います。
* ウィキメディア運動 : ウィキペディアを含むウィキメディア・プロジェクトや自由な知識を皆と共有する目的のもとに携わる人々、グループ、活動、価値観の総称
** ウィキブラリアン : ウィキメディア・プロジェクトに貢献する図書館員を指す造語
(画像:ウィキペディアと図書館コンベンション2022年のグループ写真 B20180 | CC BY 4.0 #)
1Lib1Refについて
#1Lib1Refは、ウィキペディア15週年にあたり、2016年に始まりました。初代の主催者は、世界中の図書館員1人あたりが、15分かけて出典をひとつ追加すれば、英語版ウィキペディアの「要出典」通知35万件の滞留を解消できる、と試算しました。2022年現在、図書館員や他の出典活動家たちは、80以上の異なるウィキペディア言語で20万以上の出典を追加しています。 過去3年間で、29の言語において5,063の異なる利用者がユーザー名やIPアドレスを通じて新たに参加しました。
#1Lib1Refの主催者は図書館や図書館員です!
#1Lib1Refは誰でも参加できます。そして、出典の重要性を理解している図書館員によって支えられ、図書館協会や図書館の主催により、地域ごとに展開されます。以下は、このキャンペーンが世界に与えた影響のほんの一例です。より詳細な情報はこちらのブログ(日本語)をご覧ください。
- ギュイキペディア(小さな言語のウィキペディア)の図書館員は、自国(スペイン)の貢献者上位3を占めており、自国語に信頼できる情報源を与えています
- アフリカでは、4年連続で開催されている「アフリカ図書館員週間」(#AfLibWk)というイベントを通じて、図書館員が国別対抗で1Lib1Refに参加した!
- チェコ共和国では、ウィキブラリアンがキャンペーン参加方法のビデオを作成し、メキシコでは、図書館員が参加する理由を検索する視覚的キャンペーンを行いました(以下ポスター参照)
「ウィキペディアは、人類による最も理想的なプロジェクトの一つです。ウィキペディアは、私たちだれもが共同で百科事典のコンテンツや情報を自由に作成できます。そしてこの協働で築いた知識を誰でも無料でアクセスできることを可能にしています。 そして、ウィキペディア上のコンテンツや情報を検証したり、出典を追加することで、より中立で質の高い情報に誰もがアクセスできることを意味します。」 モンテロス図書館図書館員 マルティン・アダルベルト・テナ・エスピノーザ氏 画像: #1Bib1Ref ウィキメディア・メキシコ、ビジュアルキャンペーンより
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ウィキメディア財団の役割は?
財団は、1Lib1Refが持続しながら更に発展できるよう、例えば以下のような形で、主催者を支援しています。ウィキメディア財団は、#1Lib1Refを維持し、さらに発展させることができるよう、例えば以下のような形で、キャンペーン主催者を支援しています。
- 各地域の図書館が持つ多種多様な強みや課題を学び、主催者のニーズを把握
- 助成金制度を通じて、研修施設や参加者への賞品等にかかる費用を給付
- 主催者同士をつなげ、パートナーシップとキャンペーンの連動を強化
- 出典が必要な記事の検索や質のチェックなどに活用できるツールの開発や翻訳を支援
- 主催者が必要とする戦略・指標設計や研修実施をサポート
- 各地域のキャンペーンの模様や学びを広く発信・共有
- キャンペーン後、フィードバックをまとめて共有
#1Lib1Refのようなキャンペーンを通じて、英語版ウィキペディア上で出典がない文章の割合は、過去10年間で20%減少しました。また、日本からはわずか15名のキャンペーン参加者の手により、横網町公園からクロード・トマ・アレクシス・ジョルダンまで、80以上のページに貢献しています。「もっと多くの図書館員が、世界中にもっと多くの出典を加えたら?」と想像するだけでわくわくします!
#1Lib1Refに限らず、ウィキペディアを通じた国外の図書館との連携や、ウィキメディア・キャンペーンへの参加についてご質問やご興味がありましたら、いつでもお気軽に cultureandheritage@wikimedia.org までご連絡ください。日本語でのお問い合わせもお待ちしています。
【参照リンク】
図書館と図書館協会によって推進されているイニシアティブ
- ウィキメディア図書館利用者グループ(WLUG)ー 地域を越え、図書館同士が協力し合うグループです。パートナーシップを結び、教育機関でイベントを主催したり、社会への働きかけなどを行っています。
- GLAMウィキ・カンファレンス ― 文化遺産の専門家(ギャラリー、図書館、公文書館、博物館、その他)と活気あるウィキメディア・コミュニティとを結びつける特別な国際会議です。WLUGが主催し、2023年は11月にウルグアイで開催されます。
- ウィキペディアと図書館コンベンション ― ウィキメディア・プロジェクトについて議論し、互いに学び合うために、世界中から図書館で、あるいは図書館とともに働くウィキメディアンが集まるイベント。次回は2024年にモロッコで開催予定です。
- GLAMニュースレター ― 世界中のGLAMレポートを共有する月刊ニュースレター。ウィキペディアのアカウントをお持ちの方は、「購読する」ボタンをクリックしてください。
- #EveryBookItsReader ― 2023年4月に初めて実施されたキャンペーン。 ウィキペディアの書籍に関する記事の質を高めることを目的としています。